生命化建築が応用する生命の環境適応能力
生物は以下の4つの環境適応機能によって環境変化に適応しています。
生命化建築では、これらの適応機能を建築空間に持たせ、環境の変化や居住者ひとりひとりの個人差に対応した空間へと能動的に変化していく建築空間を実現します。
三田研究室では、生理的適応と進化的適応に焦点をあてて研究を進めています。
空間ホメオスタシス制御 |
ホメオスタシスとは外部環境の変化に対し内部環境を一定に保つ生物の恒常性維持の仕組みです。これを応用したのが空間ホメオスタシス制御であり、大きな特徴として次の2点が挙げられます。
1. | 物のホメオスタシス(恒常性)に基づくアルゴリズム |
2. | 人とロボットを組み込んだフィードバックシステム |
1. 生物のホメオスタシス(恒常性)に基づくアルゴリズム
生物のホメオスタシスは、神経系・内分泌系・免疫系の3つの系の相互作用によって 成り立っています。上の図で示したようなそれぞれの系の特徴から、これら3つの系のシステムは建築空間において以下のような空間制御方法に置き換えることができます。
内分泌系制御:人の生体リズムに依存(短期・長期作用)
免疫系制御:気分・体調に依存した制御(生体防衛作用)
神経系制御:行動に依存した制御(反射的作用)
ホメオスタシス制御はこれら3つの制御方法を内包し、環境の変化だけでなく人の加齢や気分の変化といった個人差をリアルタイムにとりいれることが可能です。
2. 人とロボットを組み込んだフィードバックシステム
上はホメオスタシス制御をブロック線図で表したものです。ホメオスタシス制御では人がセンサとして組み込まれ、センサを搭載したロボットが空間内の居住者情報や環境情報を取得するコントローラの役割を果たします。居住者自身の自発的な環境コントロールが不要であり、初期条件として明確な目標値を必要としない制御を可能とします。
建築設計情報遺伝メカニズム |
生命の遺伝の仕組みとは、生物の設計図という莫大な情報を遺伝子という形で効率よく表現し、より優れた遺伝子を子孫に残し環境に適応してゆく手段です。これを建築空間に応用したのが建築設計情報遺伝メカニズムです。
1. | 生物の遺伝(情報の遺伝子化)に基づくアルゴリズム |
2. | 居住者ライフログを反映した過去の事実に基づく設計 |
1 .生物の遺伝(情報の遺伝子化)に基づくアルゴリズム
生物と建築空間情報を対応させるため、建築仕様を数値化(遺伝子化)します。それに対して遺伝のフローを模した数値処理を施し、前世代の設計情報の中からより優れた情報のみを抽出することで、次世代の設計に活用します。
2 .居住者ライフログを反映した過去の事実に基づく設計
設計情報遺伝メカニズムでは、ライフログや環境情報などの過去の事実から居住者の要望を見つけ、居住者の好みを反映した快適な空間の創造を可能とします。
2021年度リーダー: 國分萌々子